社会はどのように繁栄し、また、どのように衰退して行くのでしょうか?
どんなに良くできた組織、社会、制度、文化でも永久に繁栄し続けることはできません。時の流れとともに陳腐化し、衰退し、やがて崩壊していきます。それは人類の進化の歴史が証明しています。
しかし、悲観的になる必要はありません。「変化」と「イノベーション(技術的&社会的)」があるからです。
イノベーションの発生速度を左右する3要因
カリフォルニアの進化生物学者ジョゼフ・ヘンリックらは、さまざまな文化や民族の栄枯盛衰の調査・研究を通じて、人間社会におけるイノベーションの発生速度を左右する要因として下記の3つがあることを特定しました。
では、とりわけ21世紀に入ってからイノベーションの発生速度が加速したのはなぜでしょうか?
その理由を探るために、上記の3つの要因が、21世紀に入ってどのように変化したのかを見てみましょう。
つまり、21世紀に入ってから、グローバルなレベルで3つの要因(社会性、文化的多様性、伝達忠実性)のすべてが向上したことが、イノベーションの発生速度を加速させたと考えられます。
21世紀という時代のイノベーション
21世紀のイノベーションには以下のような特徴があります。
過去のイノベーションがテクノロジーとビジネス重視だったのに対し、グローバライゼーションが加速し多様性を深めていく21世紀におけるイノベーションは、人間価値(例えば、利便性や生活の快適さ、持続可能性、環境など)を重視する方向にシフトしてきました。
このことは何を意味するのでしょうか? 3つ考えられます。
特に、3番目の点は重要です。なぜなら、すべてのイノベーションが有益とは限らないからです。有益なもの、無益なもの、ときには有害なものもあります。また局所的には有益でも、地球全体でみたら有害なもの、あるいは短期的に見たら有益でも、長期的に見たら有害なものもあります。
なので、私たちは、思慮深いイノベーションの受益者でなければなりません。進化論的にいうと、私たちはイノベーションという突然変異のに対する「選択と伝播のメカニズム」 の担い手なのです。
しかし、21世紀の変化の速い不確実な世界では、私たちは気づかないうちに短期的、近視眼的、自己中心的な思考にとらわれがちです。その結果、長期的な視点から、かつ緊急に取り組まなければならない問題や課題は、しばしば軽視され、先送りされて、蓄積され、中には深刻化していきます。
私たちは、「選択と伝播のメカニズム」の思慮深い担い手でなければらないのです。
はじめは、自己変革から
長期的でマクロの視点から、イノベーションについて考えてきました。
しかし、私たちはそこからどんな日常生活につながるようなヒントを学べるでしょうか?
自身の日々のあり方(being)や行動(doing)につながるどんなヒントが得られるでしょうか?
まずイノベーションの発生速度から得られるヒントは次のようなものです。
そして21世紀のイノベーションの特徴から得られるヒントは:
はじめは、自己変革からです。4つのヒントが自己変革のお役に立つでしょう。
そして、4つのヒントに触発された人々の輪が拡がっていくならば、かならず社会は変わります。イノベーションの発生速度が速まり、そのうちの有益なものが評価され、選択されて、未来の子孫に伝えられていきます。
私たちは私たちの未来の子孫から「よき祖先」と呼ばれるに違いありません。