和の精神


日本文化の特徴としてよくあげられるものとして「和の精神」があります。 

ただし、ここでいう和の精神とは、人と対立することを避けて、表面的に仲良くやっていくという意味での和ではありません。

 

私たちが考える和の精神とは「まず皆が自由に正直に話し合い、お互いの意見や価値観に違いがあることを認め、その違いを尊重したうえで、共通の目標のために協力し合う」という、相違や対立の存在を前提とする和なのです。

  

聖徳太子の17条の憲法の第1条には「和をもって貴しとなす」とありますが、同時に「衆とともによろしく論うべし」(17条)ともあります。つまり、論じることを前提にする「和」を指しているものと私たちは理解しています。

 

また、孔子の論語第1巻の13段では、「君子和して同さず、少人同して和さず」とあります。この場合も、和することと同することを明確に区別し、相手に簡単に合わせる後者を否定しています。

 

聖徳太子の時代から連綿と受け継がれてきた日本の和の精神と、近代合理主義的思想に反発するかたちで20世紀末から欧米で台頭してきたリレーショナルなアプローチやダイアロジック・リーダーシップには、奇しくも人間の尊重、多様性の大切さ、対話主義などの多くの共通点があります。

その意味で日本の伝統的な和の精神は、21世紀においてはグローバルに通用する革新的な価値を秘めた思想・哲学であると言っても過言ではないと思います。

以上