自分らしく生きるのを支援するACT

ACTとは Acceptance and Commitment Therapy(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)の略称で、マンドフルネス認知療法や弁証法的行動療法と共に第三世代の認知行動療法と呼ばれる心理療法です。

 

ACTは心理療法のひとつですが、病的症状を直接的に治療しようとはしないのが特徴です。その代わりに、クライエントが「価値に沿った自分らしい人生」、「豊かで充実した意義のある人生」を送ることができるように手助けをします。病的症状は、クライエントが価値に沿った自分らしい人生に向けて歩みだすことの副次的効果として、自ずと軽減されていくと考えるのです。

 

右図はACTのヘキサフレックス(6つのプロセス)です。一見難しく見えますが、プロセスは大きく二つに分けることができます。

  1. 中心軸(柔軟な気づき、文脈としての自己)を含む左側半分は「マインドフルネス」のプロセスです。マインドフルネスとは、心を今この瞬間に集中すること。考えるのではなく、柔軟でオープンな心で、そして好奇心をもって注意を向ける「気づき」のプロセスです。マインドフルネス瞑想によって、前に進むのを妨げる認知(思考や感情)に距離を置き、その内容に振り回されずにすむような心理的柔軟性を身につけるようにします。
  2. 同じく中心軸を含む右側半分は「価値と行動活性化」のプロセスです。価値を明確にし、価値に導かれて、改善したい人生領域を選び、目標を設定して、行動を起こすプロセスです。

ACTでは、人生の質を決めるのは、価値に導かれたマインドフルな行動ができるかどうかにかかっていると考えます。そして、どれだけ多くの困難や症状を抱えていても、それに対してマインドフルに対応している限り、そのような行動をとることは可能であると考えています。

 

ACTにおける価値とは自分は人生でこれをやりたい、これを大切にしたい、いつもこんなふうに行動したい、ということを「短い文章」にしたものです。以下のような特徴があります。

  1. 価値は、日々の判断や行動の基準であり、いつもあなたと共に「いま、ここ」にあります。
  2. 価値は自由に選べます。価値を正当化する必要はありません。 
  3. 価値には方向性があり、あなたはそれに基づいて方向を見定め、前進することができます。
  4. 価値という堅固な土台があると知ることで、心の安定、確信、自信、勇気がもたらされます。
  5. しかし、心の柔軟性を保つために、価値は軽く持っている感じがベストです。

 

ACTのアプローチは、単なる心理療法に留まるものではありません。ACTは「価値に導かれて、マインドフルに生きる」という、ひとつの「生き方」、言い換えれば「人生哲学」を提案しているのです。