日本が抱える2つの深刻な問題


いま日本は2つの深刻な問題を抱えています。1つは「貧困」、もう1つは「国際競争力の低下」です。

1. 貧困

OECDの統計によれば、日本の相対的貧困率は、あの貧富の差が激しいと言われている米国よりも高いのです。

右図の通り、全世帯に占める貧困層の割合は、米国の15.1%に対し、日本はそれを上回る15.7%に達しています。日本はOECD加盟38カ国の中でも最悪国のグループに入っているのです。

 

同じ貧富の格差でも、日本と米国ではその生成過程が違うようです。米国の格差は、イノベーションが加速し、一握りの人に富が集中したためと言われるのに対し、日本のそれは貧しい人がさらに一段と貧しくなったためと言われています。この違いは深刻です。 

 

では、実数でいうと日本の「貧困世帯数」はどのくらいに達しているのでしょうか?

厚生労働省の国民生活基礎調査によれば、年収200万円以下の世帯は全体の19.7%(右図6.7%+13.0%)に上っています。

日本の総世帯数を約5,200万とすれば、19.7%というのは、なんと約1,024万という膨大な世帯数になります。

 

さらに日本の貧困問題は、貧困率と貧困世帯数だけではなく、貧困の固定化と連鎖という別の問題によってさらに深刻なものになっています。

結論だけいうと、貧困の固定化は、主として「非正規雇用」と「女性の補助労働力化」によって生み出され、維持されています。

また、貧困家庭の子供はまた貧困という貧困の連鎖は「教育費の高騰」と「教育の高度化による教育期間の長期化」によって生み出されています。

大学授業料の無償化や返済不要の奨学金などの対策によって、貧困の連鎖を断ち切らなければ、日本の未来はないと言っても過言ではないでしょう。

 

なのに、なぜ日本では抗議の声やデモ行進などが起こらないのでしょうか?とても不思議なことです。

ハッキリしているのは、私たちはもっと「声をあげなければいけない」ということです。

 

2. 国際競争力の低下

もう1つの深刻な問題は日本の国際競争力の低下です。

IMDの国際競争力年鑑から三菱総合研究所が作成(一部追記)した右図をご覧ください。

 

日本の国際競争力は、バブル経済崩壊後まもなく17位にまで急落しましたが、その後は20位台で安定するかに見えました。

しかし、実際にはそうはならず、日本の国際競争力は2018年頃からさらに一段と低下し、2023年には64ヶ国中35位まで落ちてしまいしました。さまざまな理由はありますが、結果的にアベノミックスは日本の国際競争力の更なる低下を招いたのです。

 

では、この先どうなるのでしょうか?

日本の未来を左右するともいわれる「デジタル競争力」を見ていきましょう。

同じくIMDが発表するデジタル競争力指標2023年版によれば、日本のデジタル競争力は64ヶ国中32位です。

お世辞にも芳しいとは言えません。正直なところ、この順位を見ると気持ちが落ち込みます。

 

しかし、あきらめるわけにはいきません。改善策を見つけ、実行しなければなりません。

 

では、何が日本のデジタル競争力の足を引っ張っているのでしょうか?それを見える化したのが、IMDの資料から引用した右図です。 

 

足を引っ張っているのは64ヶ国中49位の人材、50位の当局規制、56位のビジネス敏捷性です。

改善しなければならない項目はハッキリしています。あとはどう具体策を立て、実行するかです。

 

 

まとめにかえて

日本の深刻な貧困問題と国際競争力の低下は、相互に密接に関係しています。国が貧しくなり、それに伴って国民も貧しくなっているのです。

しかし、なぜか日本は平穏で安心・安全を謳歌しています。この危機感に欠ける日本の状態を、ある経済学者は「みんな仲良く貧乏になっていく日本」と表現しました。至言ですね。

 

どうしてこんなことになったのでしょうか? 

あえて一言でいえば、いまや世界は、ヒト、モノ、カネ、情報といった経営資源のみならず、イノベーションまでもが、ビジネスチャンスを求めて世界中を自由に移動するような「流動性の世界」になりつつあるのにもかかわらず、日本がその流れについていけなかったのだと思います。

 

では、これからどうすればいいのでしょうか?

2つの選択肢があります。

1つは「リスクを避け、いまあるものを活用して、なるべく長く生き延びる道を探る」という選択、他の1つは「流動性の時代に向き合い、開かれた社会を指向し、多様性を歓迎し、リスクをとって創造と変革の道を模索する」という選択です。

個人的には後者しかありえないと思っていますが、はたして「みんな仲良く貧乏になっていく日本」の穏健な多数派の人々はどちらを選択するのでしょうか?